生前整理とは、遺族の負担を減らすために財産や持ち物を整理しておくこと。親や親族の死で遺品整理を経験し、生前整理の大切さに気付く人も多いです。
では、生前整理はいつから始めたらいいのでしょうか。
今回、一般社団法人あんしん解体業者認定協会運営の解体無料見積ガイド( https://www.kaitai-guide.net/ )は、30代以上の男女500人に「生前整理」についてアンケート調査を実施。その結果をランキング形式でまとめました。
調査結果に対して、群馬FP事務所代表の松田聡子氏からご考察いただいております。
【調査結果サマリー】
・生前整理が必要だと思う人は97.2%
・生前整理を始めるタイミングは「元気なうちにできるだけ早く」
・生前整理をするメリットは「家族に迷惑をかけずにすむ」
・大変そうな生前整理1位は「持ち物の整理」
生前整理が必要だと思う人は97.2%
30代以上の男女500人に「生前整理は必要だと思うか」と聞いたところ、97.2%が「必要だと思う」と回答しました。
「生前整理」という言葉がよく聞かれるようになり、必要性についても幅広い層に浸透しているとわかります。
テレビや雑誌で生前整理についての特集を目にしたり、周囲から「親族が亡くなり、相続や遺品整理が大変だった」という体験談を聞いたりして、生前整理の必要性を知った人もいるでしょう。
生前整理を始めるタイミングは「元気なうちにできるだけ早く」
「生前整理を始めるタイミングはいつがいいと思うか」という質問には、「元気なうちにできるだけ早く(167人)」と回答した人が最も多くなりました。2位は「体調面で不安を感じたとき(130人)」、3位は「退職・定年したとき(87人)」となっています。
生前整理はいつでもできるので、おすすめなのは思い立ったときにできることから始めること。ただし実際には、病気、定年、年齢などの大きなきっかけを待っている人も多いとわかります。
<1位 元気なうちにできるだけ早く>
・生前整理について考えることがあったタイミングで。早ければ早いほど良いと思います(30代 女性)
・年齢やタイミングは関係なく、思い立ったときから始めて、何度でも生前整理を繰り返すと良いと思います(40代 女性)
・自分が病気で死亡するとは限りません。事故で突然死亡することも考えられるので、元気なうちにすぐ始めておくのがいいと思います(60代以上 男性)
できるだけ早く始めた方がいい理由としては、「病気になってからでは動けない」「事故などで突然亡くなることも考えられる」などが挙げられました。「親族の事例を見て、病気になってから生前整理しても間に合わないと痛感した」という体験談も寄せられています。
元気なうちに少しずつ進めておくと、あとからラクです。動けるときや時間があるときに資産やパスワードの一覧をつくっておき、定期的に見直して追加・削除を行うのもいいですね。
見直しのタイミングとしては、誕生日や年末年始などが挙げられました。
<2位 体調面で不安を感じたとき>
・病気になり、死を意識したとき(30代 女性)
・自分自身の体力に不安を感じるようになったとき(40代 男性)
・病気になって、自分で「以前より体力・気力がかなり衰えた」と感じたとき(60代以上 女性)
死や老いを意識したときに、生前整理の必要性を感じる人も多いでしょう。ただし進行が早い病気や、身体能力・認知能力に大きく影響する病気の場合、病気がわかってからでは間に合わないこともあります。
そのため病気にならなくても、体力の衰えを感じた時点で生前整理を始めたいという人も多くなりました。
<3位 退職・定年したとき>
・会社を退職したときです。仕事を終えたタイミングは人生の新たな区切りなので、人生を振り返りながら生前整理を進めるのがいいと思います(30代 男性)
・退職して時間に余裕ができたとき(40代 男性)
「退職すると自分の時間ができるから」という人が多数。つまり、仕事をしているうちは生前整理に取り組む時間がないと考えている人も多いようです。
確かに生前整理には時間を要するものも多いですが、コツコツと進めることも可能です。定年まで元気でいる保証もないので、できることから始めておくのもいいかもしれません。
<4位 年齢の節目で>
・60歳ぐらいから(30代 男性)
・いつ不健康になるかわからないため、50歳くらいから(40代 女性)
・75歳の誕生日。後期高齢者医療制度に変わって「自分が高齢者に区別される」と自覚するタイミングがいいと思います(40代 女性)
年齢は「40歳になったら」「還暦で」などさまざま。
おすすめは「遅くとも60歳くらいで始める」です。平均寿命は男性81.41歳・女性87.45歳ですが、健康寿命は男性72.68歳・女性75.38歳だからです。(2019年時点)
後期高齢者となる75歳は「切実感のある区切り」としてはいいのですが、すでに体力や判断力が衰えており、スムーズに生前整理を進められない可能性もあります。生前整理には気力も体力も必要なので、健康なうちに始めましょう。
<5位 子どもの進学・独立>
・子どもが成人したとき(30代 男性)
・子どもたちが独立して、今後のライフプランを考えだすタイミングが良いと思います(30代 女性)
・我が子が独立したら、少しずつ家の片付けからしていきます(40代 女性)
子どもが進学したり一人暮らしを始めたりするタイミングも、生前整理のきっかけになります。子どもが独立すると、荷物が減ったり夫婦二人で老後について話しやすくなったりするためです。
教育費の支払いが終わるタイミングなら、保険や銀行口座の整理もしやすいのではないでしょうか。
生前整理をするメリットは「家族に迷惑をかけずにすむ」
「生前整理をすることにどのようなメリットを感じるか」を聞いたところ、ダントツは「家族に迷惑をかけずにすむ(401人)」で、全体の8割以上を占めました。自分の都合というよりも、家族のためを思って生前整理する人が多いとわかります。
「生前整理したし、家族に大きな迷惑をかけることはないだろう」と思えると、自分の気持ちもラクになるでしょう。
・亡くなってから大変な思いをするのは遺族なので、少しでも負担を減らすためにやっておくべき。生前整理は、家族に対する思いやりだと思います(50代 女性)
・自分の気持ちを整理できますし、残された人にも苦労をかけない(40代 男性)
・自分の人生に区切りをつけられて、残りの人生で何に集中して生きるかが整理できる(50代 男性)
・自分が見られたくないものや人にあげたくないものを、捨てたり売ったりできる(30代 女性)
・本人しかわからないことがきちんと遺族に伝わる。本人が遺族に知られたくないことを処理しておける(40代 男性)
生前整理では「引き継いでほしいもの」「処分を任せたいもの」「見られたくないもの」を分別します。引継ぎや処分に必要な情報をまとめておいたり、見られたくないものは自分で処分しておいたりすると、遺族の負担を減らせるはずです。
持ち物を処分することで家の中が片付くので、暮らしやすくなったり、気分が新たになったりする効果も期待できます。
サブスクなどの整理を進める場合にも、「本当に自分に必要なサービスかどうか」を見極める必要があるので、生前整理後も生き残ったサービスは「厳選されたものだけ」になるでしょう。
大変そうな生前整理1位は「持ち物の整理」
大変そうに感じる生前整理の圧倒的1位は「持ち物の整理(284人)」でした。2位は「パスワードのリスト化(104人)」、3位は「現金・有価証券の整理(99人)」、4位は「不動産の整理(90人)」でした。
生前整理では、目に見える財産(持ち物や不動産)も目に見えにくい財産(銀行口座や保険)も整理しますので、大変そうと思う方が多いでしょう。
そのため、まずは「やることリスト」を作成し、コツコツと進めていくのがおすすめ。WEBで「生前整理でやることチェックリスト」なども配布されていますので、活用してみてはいかがでしょうか。
<1位 持ち物の整理>
・家の片付け。不要なものを捨てるのは意外と大変で、費用もかかる(30代 男性)
・家具(とくに父母・祖父母の残した家具)の処分。いい家具は価値がわかる業者に引き継ぎたい(50代 女性)
・古くなってしまった思い出の品です。とくにアルバムは捨てがたいです(60代以上 女性)
洋服や家具など、身の回りのものを処分するのは大変です。数が多いですし、「まだ使うかもしれない」「思い入れがあって捨てられない」といったものもあるからですね。
処分していいか判断に迷うものについて、今すぐ捨てるか捨てないかを決める必要はありません。保留の箱や棚をつくって、一旦保管しておきましょう。
処分することを決めたものについては、「ゴミとして捨てる」「他人に譲る」「フリマアプリやリサイクルショップで売る」といった方法がとれます。
<2位 パスワードのリスト化>
・SNSのアカウント・パスワード、金融機関のパスワードなどを書き出すことです(30代 女性)
・ネットサービスのパスワード管理(40代 男性)
・デジタル機器のパスワードをまとめること(50代 男性)
スマホやストレージサービスのパスワードがわからず、「遺影にする写真のデータが手に入らない」「サービスを解約できない」と困る遺族も少なくありません。そのためパスワードのリスト化は確実にやっておきたいですね。
まずはパスワードを設定している機器やサービスをリスト化するところから始める必要があります。
ただまとめたパスワードを生前に見られてしまっては、プライバシーの侵害や情報漏洩の危険性があります。まとめたパスワードをどうやって遺族に渡すかも難しい問題です。
<3位 現金・有価証券の整理>
・お金関係の処理。とくにスマホで利用しているネット銀行や証券口座(30代 女性)
・預金口座にある現金の処理(40代 男性)
・銀行口座のことやお金のこと(40代 女性)
ネット銀行やネット証券を使っている場合、通帳などがないので、遺族が「故人がもっていた銀行口座・証券口座の存在を知らない」ということもあり得ます。
そのため「どの銀行や証券会社に口座をもっているのか」「どのくらいのお金が入っているのか」などを一覧表にしてまとめておきましょう。使っていない口座は解約して、口座を少なくしておくのもおすすめ。口座を少なくすることで、あなた自身も自分の資産状況を管理しやすくなるでしょう。
また銀行口座の住所変更手続きを忘れていると、遺族がスムーズに現金を引き出せなくなります。金融機関に登録している名前や住所、連絡先に変更がないかも、確認しておいてくださいね。
<4位 不動産の整理>
・親から受け継ぐ畑や田んぼがありそうなので、「大変なのは不動産の整理かな」と思います(30代 女性)
・不動産・土地の権利関係を整理すること(40代 男性)
・自分が動けるうちに持ち家を処分したい(60代以上 男性)
不動産の生前整理方法としては「売却」「生前贈与」「アパート経営や駐車場で収益化」などがあります。
子ども世代がいらないという家や土地なら、売却して現金化するのがおすすめ。現金化することで、相続人(子ども)が複数いても財産を分けやすくなり、トラブルの可能性が低くなります。
<5位 デジタルデータの整理>
・デジタル系は見られたくないので、業者に頼むかもしれません(30代 女性)
・パソコンやスマホのデータ消去。見せたくないものもあるので(30代 男性)
・パソコン内の個人情報を整理すること(50代 男性)
スマホやパソコンの中には、写真、連絡先、パスワードなどの個人情報がたっぷり保管されています。家族に見られたくないものもあるでしょうし、第三者にロック解除されて悪用されると困るデータもあるでしょう。
秘密にしたいデータがある場合は、「一定期間アクセス・ログインがないときに自動でデータを削除してくれるソフト」などを使う方法もあります。
<6位 資産のリスト化>
・相続税がかかってしまうような資産の整理(30代 女性)
・資産の一覧表を作成すること(60代以上 男性)
親の財産がどこにいくらあるのかわからないという人も多いため、財産目録の作成は重要です。遺族が財産を調査するのは手間と費用がかかるものの、本人が生前に財産目録をつくっておけば、相続がスムーズに進みます。
借金・滞納・未払いといったマイナスの財産についても、まとめておくか清算するかしておきましょう。
<7位 保険証券の準備や手続き>
・保険証券などの整理(30代 女性)
・加入している保険などの証券をまとめておくこと(40代 女性)
故人が加入していた保険について調べたり、保険金受取の手続きをしたりするとき、保険証券がすぐ見つかると、手続きがスムーズです。そのため「保険証券をまとめておく」と答えた人も多数。
また生前整理をきっかけに保険を見直す人もいます。
<8位 サブスクの整理>
・加入しているサブスクをまとめる(30代 女性)
・サブスクなどの解約をしておくことです(50代 女性)
サブスクの契約者が亡くなっても、サブスクの契約は自動解約されません。
銀行口座やクレジットカードが解約されることによって料金未納になり、結果的にサブスクが利用停止・強制解約になることはあります。ただし「料金の支払いが止まったら、自動で解約されるサービス」ばかりではありません。
死後、遺族にサブスクを解約してもらうためには、少なくとも契約しているサブスクの一覧を作成しておきましょう。生前整理を機に、利用頻度の低いサブスクを解約しておくのもおすすめです。
まとめ
生前整理を始めるタイミングは「思い立ったとき」がおすすめ。やる気が高まっているときに始めましょう。
先延ばしにしていると、急な病気や怪我で思うように生前整理が進められなくなるかもしれないからです。
とはいえ、一気にすべて片付ける必要はありません。「使っている口座やサブスクをリストアップし、パスワードをまとめる」「使っていないサービスを解約しておく」など、できることから始めてみてはいかがでしょうか。
「体調が悪くなってから生前整理したい場合」や「持ち物が多すぎて自分一人では整理できない場合」などには、生前整理を専門に行う業者に依頼するのもおすすめです。
※もしご実家が賃貸物件で商売されている場合、原状回復を行う必要があります。 そのため、契約内容などを事前に確認するようにしましょう。
【調査概要】
調査対象:30代以上の男女
調査期間:2024年3月14日~17日
調査機関:当協会調査
調査方法:インターネットによる任意回答
有効回答数:500人(女性334人/男性166人)
回答者の年代:30代 45.4%/40代 32.2%/50代 16.2%/60代以上 6.2%