総務省統計局によると、日本の総人口は前年に比べて82万人も減少している一方で、「高齢者(65歳以上)」の人口は6万人増加して過去最多となりました。総人口で占める割合を見ると29.1%と実に10人に3人が高齢者であり、また2040年には35.3%になると見込まれています。
単身世帯の増加によって孤独死が増えており、今や見回り支援や葬儀の相談などの「終活サポート」を行う自治体が出てきました。
しかし、まだまだ行政サービスとしては始まったばかり。終活サポートを行っているのは、神奈川県の横須賀市や大和市、綾瀬市、千葉県や愛知県、兵庫県といった限られた一部の自治体のみです。また、終活サポートを受けるためには、原則として高額の財産を所有していない方で一人暮らしをされている方、身寄りのない方など、一定の条件を満たしていなければ利用できないことも。
ただし、それも自治体によっては異なり、また行っているサービス内容も、エンディングノートの配布やそれ以外など、統一されていないようです。
今後、単身世帯の高齢者が増加することは間違いなく、各自治体による終活サポートの拡充は急務と言えるでしょう。では、現在どのような状況にあるのでしょうか?
そこで今回、『コトダマ』を運営する株式会社CONNECTは、各自治体の終活関連業務に携わる方(相続・福祉・介護・医療など)を対象に「終活×デジタル化の課題」に関する調査を実施しました。
現在、各自治体で行っている「終活サポート」とその課題について
はじめに、お勤めの自治体ではどのような終活サービスを行っているのか伺いました。
「現在、自治体ではどのような終活サポートを行っていますか?(複数回答可)」と質問したところ、『安否確認(見守り支援)(48.2%)』と回答した方が最も多く、次いで『介護や医療、福祉に関する相談やサービス(46.5%)』『関係先への連絡(41.9%)』『遺品や資産に関する相談(22.1%)』『葬儀の相談(13.0%)』と続きました。
終活に関して具体的にどんな問い合わせがある?
・お墓の選定(30代/男性/京都府)
・最近は独り身が増えてきており、亡くなった後の資産相続についての相談(40代/男性/香川県)
・相続やデイサービス等の介護、福祉に関する問い合わせ(40代/男性/三重県)
・遺品整理(50代/男性/広島県)
などの回答が寄せられました。
終活に関わるさまざまな問い合わせがあることがわかりました。
次に、自治体の終活サポートに課題を感じているか伺いました。
「現在、自治体で行っている終活サポートに関して、どのくらい課題があると感じていますか?」と質問したところ、『とても大きな課題があると感じている(38.0%)』『やや課題があると感じている(47.8%)』と約85%の方が、自治体で行う終活サポートには課題があると回答しました。
特に課題が大きいと感じるのはどのような点でしょうか。
「特に課題が大きいと感じるのは、どのような内容ですか?(上位3つまで)」と質問したところ、『職員の数(51.6%)』と回答した方が最も多く、次いで『業務への負担(50.9%)』『経費(40.7%)』『サポートの種類(豊富さ)(31.1%)』『サービスの充実(22.7%)』と続きました。
自治体の終活サポート部門は、職員の数が足りず、一人ひとりの負担が大きいことが明らかになりました。
職員の数を一気に増員するのは難しい自治体も多いでしょう。
そのため、できるだけ業務を効率化して職員の負担を減らすことが急務と言えそうです。
各自治体ではペーパー業務という慣習からどのくらい脱却している?終活サービスにもデジタル化(ペーパーレス化)を取り入れている割合は?
先程の調査で、自治体の終活サポートに関する課題が見えてきました。
煩雑な業務を少ない人数で行うには、業務効率化が喫緊の課題のようです。
業務効率化にはペーパーレス化が効率的と言われますが、終活サポート部門のデジタル化はどの程度進んでいるのでしょうか。
「終活サポートに関してデジタル化が進んでいると思いますか?」と質問したところ、『まったく進んでいるとは感じない(16.3%)』『あまり進んでいるとは感じない(40.9%)』と自治体の終活サポート業務に関わるおよそ6割の方が、デジタル化が進んでいないと感じていることが明らかになりました。
デジタル化が進んでいないことで、業務に支障はないのでしょうか。
■デジタル化が進まないことが業務に及ぼす弊害とは?
・終活人口が増えるなかでのデータ管理(40代/男性/三重県)
・紙面での資料の為、調べる・追加する・変更するなどに時間がかかること(40代/男性/埼玉県)
・書類の手続きが大変。早くデジタルになって欲しい(50代/男性/大阪府)
・マニュアル化やパターン化が進んでいないので都度手作業になる(50代/男性/富山県)
書類が紙であることの弊害が多く寄せられました。
書類がどこにあるのかといった検索や情報の共有・更新に時間がかかることが想像できます。
終活サポートをデジタル化するのは難しい?そこにはどのような理由が?
デジタル化が進まないことで業務が煩雑になり効率化が進まない自治体が多いことが浮き彫りになりました。
終活サポート業務にデジタル化を導入するのは難しいのでしょうか。
「終活サポートにデジタル化を取り入れるのは難しいと感じますか?」と質問したところ、『とてもそう思う(20.5%)』『ある程度そう思う(54.5%)』と終活サポート業務に携わる75%の方が、デジタル化の導入は難しいと回答しました。
そこには、どのような理由があるのでしょうか。
「難しい理由として当てはまると思うものを教えてください(複数回答可)」と質問したところ、『高齢者がデジタル化に対応できないため(58.4%)』と回答した方が最も多く、次いで『職員が新しいシステムに対応できないため(33.1%)』『システムを導入するための費用がかかるため(31.4%)』『ペーパー業務に慣れてしまっているため(25.9%)』『終活サポート業務は対面業務が多いため(20.8%)』と続きました。
およそ6割の方が、高齢者がデジタル化に対応できないためと回答しています。
デジタル化の必要性は理解しているものの、現場での導入は困難だと感じている理由がわかりました。
終活サポートのデジタル化で検討できる年間予算はどのくらい?デジタル化で期待したいこととは?
ここまでの調査で、終活サポートのデジタル化は、実際の現場では難しいと感じている方が多いことがわかりました。
そこで、終活サポートのデジタル化に向けてのサービスについて伺いました。
「終活サポートのデジタル化に向け外部の終活サービスを利用する場合、どのくらいの年間予算であれば検討できますか?」と質問したところ、『費用が掛かるなら利用しない(21.1%)』と回答した方が最も多く、次いで『50万円以上150万円未満(20.4%)』『150万円以上250万円未満(19.5%)』『250万円以上500万円未満(15.5%)』『50万円未満(13.6%)』と続きました。
外部サービスの導入には費用がかかることから、利用に二の足を踏む自治体が多いかもしれません。
一方で、費用が出せると回答している自治体は合計して8割近くいることから、終活サポートのデジタル化を求める方は多いことが予想される結果となりました。
■終活サポート業務の中で、デジタル化すれば効率化が進むと思うものとは?
・デジタル化が進めば書類保管が不要になり、調べる時間も短縮できると思います(50代/男性/山形県)
・相談業務の予約制、アフターフォローの充実(50代/男性/大阪府)
・エンディングノートを初めとして、ほとんどの行程が削減されて効率化が図れると思っています(50代/男性/埼玉県)
・相続に関わる書面類をデジタル保存できれば当事者死亡後の手続きが円滑になり、担当職員の工数削減が実現するのではないかと思われる(50代/男性/東京都)
このように、デジタル化すれば幅広い業務で効率化が図れ、工数が減る可能性が高いという回答が多く寄せられました。業務が円滑に行われることにより、職員の負担の軽減、費用削減などにつながるでしょう。
【まとめ】終活サポートの課題は職員不足!今後、デジタル化を進めていく必要性も感じている
今回の調査で、終活サポート業務の課題や、それに伴うデジタル化の必要性が明らかになりました。
約85%の方が、自治体で行う終活サポートには課題があると回答しています。具体的には、職員の数と業務の負担を課題に挙げている方が多いようです。
また、自治体の終活サポート業務に関わるおよそ6割の方が、デジタル化が進んでいないと感じています。
さらに、約7割の方がデジタル化の導入は難しいと実感しているという結果も出ています。
一方で、デジタル化すれば幅広い業務で効率化が図れ、工数が減る可能性が高いというコメントが多く寄せられていることから、デジタル化によって業務が円滑に行われることで、職員の負担軽減や費用削減などにつながる可能性は高いと言えるでしょう。