内が亡くなった際、遺された家族がすべきことは多岐に渡ります。
死亡届をはじめとする各種手続きに、葬儀会社の手配や菩提寺への連絡など…愛する家族を失ってすぐに様々な作業をこなすことは、多くの人にとって精神的に辛い部分も多いでしょう。
その中でも、故人との思い出や気持ちも同時に整理する必要のある遺品整理は、「特に辛い」という声をよく耳にします。
とはいえ、先延ばしにすればするほど後々の作業に悪影響を及ぼすことも。
そこで林商会では、遺品整理経験者を対象に「遺品整理はいつ頃から始めたか」アンケート調査を実施しました。
▼遺品整理を始めたタイミング「葬儀終了後すぐ」が最多
(N=200名、単一回答。2022年6月1日~2022年6月2日に実施したインターネット調査による)
遺品整理を始めたタイミングで最も多かったのは「葬儀が終わってすぐ(~1週間程度)」のタイミングで、全体の28.5%。
次いで「諸手続き後(~1カ月程度)」、「四十九日の後(~2カ月程度)」と続き4番目には「1年以上」と、早めのタイミングで遺品整理を始める人と、そうではない人とがハッキリと分かれる結果となりました。
では次に、「なぜそのタイミングで遺品整理を始めたか」について質問した結果を、回答が多い順にみてみましょう。
【葬儀が終わってすぐ(~1週間程度)】
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・借家だったため、契約解除の必要があったため。また、弟が他県より来ていたため、帰る前に行った。(50代男性)
・目につくものに気持ちが揺さぶられて、何かしていないと落ち着かなかったから。(50代女性)
・本当は生前から少しずつやって欲しかったのですが、本人がひとつも捨てたくない、死んでからにしてくれと希望したので。(30代女性)
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遺品整理を、葬儀後すぐに始めた人達の回答では、上記のように「借家の明け渡しのため」や故人が亡くなったことによる悲しい気持ちを紛らわすためなど、様々な回答がみられました。
しかしなかには、このような回答も。
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・賃貸にもかかわらずゴミ屋敷状態で、さらに自殺だったため、すぐにでも遺品整理をしなければならない状況だった(30代男性)
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ゴミ屋敷状態になってしまっていると、“遺品”として整理すべきものとそうでないものの仕分けをするだけにも相当な手間と時間を要しますが、自殺だったことからさらに特殊清掃も必要となると、必然的に早い段階で遺品整理を行わなければなりません。
故人に対する悲しみに耽ることもままならない状況で、遺品整理を行うことは精神的にも辛いでしょう。
また、上述以外では「家族が集まるタイミングがそこしかなかったから」「遠方のためなかなか行けないから」といった回答も寄せられていました。
【諸手続き後(~1カ月程度)】
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・諸々の手続きが終わって心にも少し余裕が出来てからはじめました。(20代女性)
・四十九日を過ぎてしまうとなかなか家族全員が集まる機会がないから。(30代男性)
・葬儀後はバタバタしていたので遺品整理どころか、必要なものを探すのに大変だったため。(50代女性)
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亡くなってすぐだと「なかなか時間が取れない」「気持ちの整理がつかない」というのは当然のことでしょう。
とはいえ、なるべく早い段階で済ませておきたかった、と考える人がこの回答では多かった印象です。
また、これ以上先延ばしにすることで、遺族間で集まる機会が減ってしまうことを理由に挙げる人もみられました。
【四十九日の後(~2カ月程度)】
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・他の事で手が回らなかったのと、区切りをつける意味で四十九日の後にしました。(40代男性)
・49日までは親族も頻繁に来るため、区切りとしてその日まで待った。(30代女性)
・一応四十九日がひと段落の目安かと思ったことと、気持ちもだいぶん落ち着いたので。(40代女性)
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このタイミングで遺品整理を始めた理由として、最も多く寄せられた回答は「ひとつの区切りとして」というものでした。
四十九日は「忌明け(きあけ)」といわれ、ひとつの節目とされており、お墓への納骨もこのタイミングで行われることが一般的です。
四十九日を境に、徐々に日常へ戻る人が多いことから、このタイミングで遺品整理を始める人も多いのではないでしょうか。
【1年以上】
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・遺族の中で進める気がない。皆がめんどくさいのか、話が進まない。(40代男性)
・不慮の事故で亡くなったため、気持ちの整理がつかなかったから。(30代女性)
・3回忌を終え一区切りついたところで家の売却を考え始め少しずつ整理し始めました。(50代女性)
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1年以上経ってから遺品整理を始めたという人の回答では、気持ちの整理がつくのに時間がかかったという声の他に、面倒でなかなか手が付けられなかったという声も多く、家の売却や引越しなど何らかのきっかけで、やっと重い腰をあげて作業を開始したという声が目立ちました。
このように、遺品整理を始めるタイミングは人により様々ですが、“その時期に遺品整理を始めたからこそ”大変なことや、起こるトラブルもあるでしょう。
そこで、遺品整理を始めたタイミングによって、「大変だと感じたことは何か」質問した結果をご紹介します。
▼自身が遺品整理を始めたタイミングで大変だと感じたこと
(N=200名、複数回答。2022年6月1日~2022年6月2日に実施したインターネット調査による)
複数回答で調査した結果、「想像以上に時間がかかった」という回答が最も多く全体の約65%の人が選択しています。
次に「気持ちの整理がついていなかった」「遺族間での相談が不十分だった」と続きます。
それでは回答の詳細をみてみましょう。
【想像以上に時間がかかった】
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・すぐに片付けられると簡単に考えていましたが、あるとあらゆるものが出てきて非常に時間がかかり大変だった。(20代女性:四十九日後)
・とにかく片づけないといけない物が沢山あり過ぎて、業者には頼まなかったので、処分する物の分別にも時間はかかるし、銀行や郵便局、農協などの手続きも面倒なことが多く、なかなか進まなくて本当に疲れました。(50代女性:相続前)
・いざ始めてみるとやはり心が追いつかなくて何度も途中で休みながら行わなければならず進まなかった。後回しにしたことで一念発起にもかなり努力が必要でした。(40代女性:1年以上)
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遺品整理を始めたタイミングに関わらず、「想像以上に時間がかかった」を選択する人が多かった印象です。
「早めに始めて早めに終わらせよう」と葬儀後すぐに開始するも、精神的に辛く手が止まってしまったという人や、「とにかく物が多すぎて進まなかった」という声も多く寄せられていました。
また、期間が空いてしまったことにより、遺品の整理以外にも空き家となった家の掃除にも時間がかかったという声もみられました。
【気持ちの整理がついていなかった】
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・故人喪失感が相乗以上に大きく深くて長く続いていたので故人の関係する遺品を見ると脱力感と悲しみが襲ってきたからです。(50代女性:〜1カ月程度)
・故人が亡くなった実感が無い中開始しました。この作業をしていると思い出が蘇り泣いたり落ち込んで作業が進まない日がありました。(40代女性:葬儀後すぐ)
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「気持ちの整理がついていなかった」では、早めの段階で遺品整理を始めた人が目立つ結果となりましたが、中にはこのような人も。
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・もう亡くなって三年になるので遺品整理をしようとゆう事になったのですが、全てが思い出の物ばかりなので、いざタンスを開ければ眺めてしめる引き出しを見てはしめるを繰り返していたのです。(50代女性:1年以上)
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期間が空いても気持ちの整理がつかず、整理がはかどらなかった経験も寄せられており、愛する家族の死を受け止め自ら遺品を整理することの難しさを痛感する声もみられました。
【遺族間での相談が不十分だった】
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・家をたたむのと並行しての遺品整理だったが、費用の面で親族と揉めてしまった。人が亡くなっただけでも大変なのに、親族間で遺恨を残すことになったのは非常に胸が痛んだ。(30代男性:四十九日後)
・親の兄弟が権利を主張してきたり、親族間で気持ちがすれ違ってしまいました。お互いの信頼関係が崩れ、仲が良かった兄弟関係にもヒビが入りました。(40代女性:葬儀後すぐ)
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遺族間での相談が不十分だったと感じた人の回答では、実際にトラブルに発展してしまった人の声が目立ちました。
整理した遺品の行方や権利、各種費用での意見の食い違いなど、遺品整理をきっかけに関係が悪くなってしまった人が多い印象です。
中には、遺品整理が終わった後からトラブルに発展したという人もいて、それぞれに故人を想う気持ちがあるからこそ、こういったトラブルも起こってしまうのでしょうか。
いずれの回答をみても、遺品整理を行うことの精神的・肉体的な負担は相当なものだということが分かります。
「遺品整理を早めに済ませなければいけないけれど、なかなか気持ちの整理がつかない」
「遺品整理について家族でもめている」
といった際は、思い切って専門家に頼ることを視野に検討するとよいかもしれませんね。