“事故物件”という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。
不動産取引時に告知事項を有する物件のことで、主に『過去に死亡事故があった物件』という意味で使用されています。
以前は、宅建業者によって、どこまで告知するかはさまざまでした。
トラブルにならないようにと、売り主が知っているすべての瑕疵をかなり前の事例まで告知する業者もあれば、一度人が住んだら、あるいは一定年数が経ったら告知しない業者もありました。
そこでGoodServiceは、不動産仲介業に従事する方を対象に「事故物件の取り扱いの変化」に関する調査を実施しました。
告知義務の基準についてはっきりと定められていなかったのですが、2021年に国土交通省より『宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取り扱いに関するガイドライン』が策定され、下記の図のように、告知基準が明確になりました。
※引用元:宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドイラン概要(https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/10/gaiyou-1.pdf)
実際、不動産売買やその仲介業においては、何か変化があったのでしょうか。
そこで、株式会社GoodService(https://www.kataduke-kaitori.com/)は、不動産仲介業に従事する方を対象に「事故物件の取り扱いの変化」に関する調査を実施しました。
- 認知度は8割以上!?公表されたガイドラインに対する仲介業者の反応
はじめに、事故物件の取り扱いに関するガイドラインについて伺ってみましょう。
「2021年に策定・公表された『宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン』について内容を把握していますか?」と質問したところ、『完璧に把握している(37.6%)』『ある程度把握している(48.5%)』『ガイドラインが公表されたことだけ知っている(10.7%)』『まったく知らない(3.2%)』との回答結果になりました。
『把握している』と回答した方は実に8割以上に及び、事故物件取り扱いに対する関心の高さを窺い知ることができます。
続いて、『完璧に把握している』『ある程度把握している』と回答した方に内容について伺ってみましょう。
「ガイドラインの内容についてどう思いましたか?」と質問したところ、『大変良いと思った(26.7%)』『まあ良いと思った(61.1%)』『あまり良くないと思った(11.2%)』『非常に良くないと思った(1.0%)』という回答が集まりました。
約9割の方が『良い』と回答し、今まで不明瞭だった事故物件の取り扱いが明確になったことは、不動産仲介業の方にとっては新しい展開であることでしょう。
そして、今回公表されたガイドラインの内容について、具体的な感想を伺ってみました。
■事故物件に関する新たなガイドラインが公表!不動産仲介業者から見た率直な感想とは?
・ある程度、情報の公平性が保たれるのではないかと思う。担当者によっては売上を上げたいため事前に情報を公開せず、後々トラブルになる場合が多いため、その抑止になるのではないかと思う(30代/男性/東京都)
・貸し出した後にトラブルにならなくて良い(50代/女性/岐阜県)
・3年間という期限を設けたことで、不動産取引の流動性に拍車がかかる(50代/男性/愛媛県)
・よくまとまった内容で事故物件の取り扱い実務に生かせるようになった(50代/男性/東京都)
などの回答が寄せられ、告知の具体例が明確になったことで、契約完了後のトラブル回避に役立ったことや実務がスムーズに行えたことなどが挙げられました。
ガイドラインの公表は、不動産仲介業者にとってプラスに働いているようです。
- ガイドラインの公表による変化はあった?大きく変わったのは【告知対象となる期間】
先程の調査で、事故物件の取り扱いに関するガイドラインが公表されたことで、さまざまなメリットがあったことが分かりました。
不動産仲介業者の方に影響を与えたガイドラインですが、公表される前と後では告知業務にどのような変化があったのでしょうか?
「ガイドラインが公表される前後で、事故物件の告知に関する業務に変化はありましたか?」と質問したところ、『大きく変化した(34.1%)』『多少の変化があった(50.2%)』『まったく変わっていない(15.7%)』との回答結果になりました。
そこで、「変化した」と回答した8割以上の方に、具体的にどのような変化があったのか聞いてみました。
「どういった点での変化がありましたか?(複数回答可)」と質問したところ、『告知対象となる期間(52.6%)』と回答した方が最も多く、次いで『告知事項の記載(46.5%)』『告知対象となる物件(37.1%)』と続きました。
半数以上の方が『告知対象となる期間』と回答し、いつまで告知を続ける必要があるのか不明瞭だった点が明確になったことは大きな変化と言えるでしょう。
その他にも『告知事項の記載』や『告知対象となる物件』などの回答も比較的多く挙げられました。
人の死というセンシティブな問題を取り扱うからこそ、明確な指針が必要なのかもしれません。
- そもそも「事故物件」の基準は曖昧だった!?法改正前からの具体的な変更点とは
ガイドラインが公表されてから、不動産仲介業者の方が行う業務の中で最も変化があったことは『告知対象となる期間』であることが分かりました。
引き続き、業務の内容に『変化があった』と回答した方に、ガイドライン公表前の事故物件の取り扱いについて伺ってみたいと思います。
「ガイドライン公表前、事故物件の対象としていたのはどのような死亡事例のあった物件ですか?(複数回答可)」と質問したところ、『老衰(37.8%)』と回答した方が最も多く、次いで『事故死(36.7%)』『病死(36.5%)』と続きました。
『老衰』で亡くなった方が多いようですが、『事故死』や『病死』もほぼ同ポイントとなりました。
高齢化が進み高齢者の一人暮らしが増える現在、このような自然死に近い形や、日常生活で起こりうる事故で最期を迎える方はさらに増えていくのかもしれません。
次に、告知対象となる期間についても伺ってみましょう。
「ガイドライン公表前、事故物件の告知対象としていた期間はどれくらいですか?」と質問したところ、『2年以上3年未満(32.0%)』と回答した方が最も多く、次いで『1年以上2年未満(29.9%)』『3年以上5年未満(13.6%)』と続きました。
告知対象期間にばらつきがあることからも、独自の判断基準で期間を決めていたことが分かる結果になりました。
このような曖昧さが、顧客とのトラブルを招く要因のひとつであったのかもしれません。
そして、ガイドライン公表後、買い手への告知の方法はどのように行っているのでしょうか?具体的に伺ってみました。
■ガイドライン公表後の告知はどのように変化した?
・社内でマニュアル化されたものの、込み入った事情がある物件に関しては上長に要確認になっている(30代/男性/東京都)
・紙媒体にまとめて、手渡ししながら説明している(40代/女性/東京都)
・ガイドラインに記載された告知期間に基づき、その他の自然死の事案も告知するようにした(50代/男性/神奈川県)
・期限を明確に決めて早期な告知を実践(50代/男性/千葉県)
などの回答が寄せられました。
早い段階で告知することや書類に残すことなどが挙げられ、後々トラブルが起こらないよう注意を払っていることが分かりました。
裁判などの大きなトラブルに発展することもある事故物件の告知は、可能な限りガイドラインに沿って行うことがベターと言えるでしょう。
- 売り手、買い手からの反応はあった?基準の明確化による意識の変化
ガイドラインが公表される前後では、告知に関するさまざまな項目に変化があることが分かりました。
このガイドラインをうけ、売り手や買い手である顧客からの反応はどのようなものだったのでしょうか?
「心理的瑕疵の告知に関する基準が明確化したことにより、売り手・買い手となる顧客からの反応はありましたか?」と質問したところ、『はい(81.5%)』『いいえ(18.5%)』との回答結果になりました。
実に8割以上の方が『はい』と回答し、多くの顧客から「反応があった」ことが分かりましたが、具体的にどのような反応があったのか伺ってみましょう。
■事故物件の告知基準が明確に!その時顧客の反応は…?
・明確化したことで、逆に価格設定への納得を得られた(30代/男性/広島県)
・事故物件への偏見がなくなってきた(30代/男性/埼玉県)
・情報開示について評価する声が多かった(40代/男性/香川県)
・安くなるなら紹介して欲しいとの申し出があった(50代/女性/大阪府)
などの回答が寄せられ、安価な価格設定や、正しい情報を開示することへの評価などが多く挙げられました。
事故物件の捉え方は人によってさまざまで、正しい情報を得たうえで判断することは、売り手や買い手、双方のメリットに繋がるのかもしれません。
- 【まとめ】法改正により、事故物件の扱い方にも変化が?告知義務が発生する物件に注意!
今回の調査で、2021年に公表された『宅地建物取引業者による人の死に関するガイドライン』について、8割以上の不動産仲介業の方が『把握している』と回答しました。
そして、今まで曖昧だった告知基準が明確化されたことで、買い手とのトラブル回避や円滑な実務に繋がっているようです。
また、売り手や買い手となる顧客からの反応も大きく、正しい情報を知り納得した取り引きができるといった声が多く挙げられました。
事故物件への理解を深めガイドラインを参考に情報を共有することが、不動産仲介業者と顧客との思わぬトラブル回避のために重要なのかもしれません。